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婦人画報 大正15年 北大路魯山人 小鳥の鋤焼① 原文 

婦人画報 大正15年 北大路魯山人 小鳥の鋤焼 

寒の折の家庭料理には、なんといっても鋤焼が一番でしょう。中でも牛肉鶏肉の鋤焼は、普通ですが最も趣が多いのは小鳥類の鋤焼です。すき焼きというのは昔百姓が山へ行って小鳥を捕らえたとき、携えて居た鋤を炭火で熱し、その上に小鳥のネクを乗せ焼きながら食べたのが始まりです。肉に味を付けることなどは色々と試みたあとのことでしょう。その後この方法がやや進歩してきて一般的になりかけたのは、鷹匠が狩猟に出たときに草鞋形の厚さ1分くらいの荒鉄に縁をつけたものを幾個も携えて行き捕らえた小鳥の肉を醤油を付けてその上で焼いて食べたものです。それが進歩して今日のように調味料を加えたり、又肉の他にいろんな野菜を入れて煮る風になったので、本当の鋤焼は何もいれずにただ肉を焼いて食べるのです。

実際の味のいいところは、肉を煮過ぎず、両面の上側に火が通れば中は半熟くらいのところが良いのです。煮過ぎるとせっかくの肉の味を失います。肉屋で鋤焼を食べる時でも、もし食べきれずに残った場合には水気をすっかり取り鍋の上で肉だけビーフステーキのようにして食べると又結構なものです。

さて小鳥の鋤焼ですが、一体小鳥料理といえば、たいていは焼くか、たたいて玉にしそれを吸い物にするくらいに考えている向きが多いですが、少し大きい小鳥でしたら、鋤焼にすれば非常に美味しいご馳走です。その方法は極簡単で先ず小鳥を解き、細い骨のあるところと、肉の固まったダキ身のところをわけて、骨のある部分だけ叩きます。肉は弾力のあるところが美味なのですからダキ身は叩いてはいけません。そして、雀なら1羽を2つくらいに肉を取り、つぐみなら、4つくらいで鳩なら8つくらいにというように口の中に一口くらいに入るおおきさに切って普通の牛肉の鋤焼の場合と同様野菜を加えて煮れば良いのです。それに小鳥は脳みそが最もうまいのですから頭は捨ててはいけません。口ばしの方だけ喉の半分から切って捨て、のうみそと頭を残しておいて、喉の骨はたたき、頭はそのままにして煮るのです。ここは骨とも柔らかで非常に美味いものです。

鋤焼を美味しく食べるには汁の下限が大切です。肉屋や鳥屋で食べると美味しいが自宅のはまずいという人がありますがこれはその汁の加減にあって肉屋ではあらかじめしるができていてそれで煮るから美味しいのです。