ご家庭で簡単懐石料理。 ブログ

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【婦人画報 大正15年 北大路魯山人 凝った日本料理 原文②】

どんなにおいしいものでも器物が悪くては価値が失われるように中身が珍肴であるとともにその器物も珍品が要求されてくる。そこでいろいろな高価な器物が用いられてくるのであるが例えば、食器として珍重がられる明時代の赤絵とか、染付の食器、あるいは又日本のものではこくたんなどのような器物がむしろお金高であって、1つの茶碗が何百円、あるいは何千円するものを用いるようになってくる。こうした器物などに凝りだしたら、際限のないことであって、むしろ食物というより、食器の収集というような自慢がいわゆる料理の自慢となってくるのである。昔茶人秀吉から拝領したという茶碗が一国の所領よりも高価なものであったという話もこうした美的鑑賞の意味からだんだん打ちづけられてくるのであるが、今日では抹茶茶碗などは実に高価な物ああって、何万円という値のものは少なくない。

食物として果実類の中でも随分贅沢なものがあるが、日本産で山科の木村園などからできる葡萄は百目8円もして、あの小さな1粒が2、30銭にもついているがこれらはいちぶの貴族にしかわたっていない品である。もちろん粒といい光沢といい甘さといい普通の葡萄では味い得られないものであるが、しかしなにれにしても、これらは贅沢品ということができよう。